ミュージカル 「キス・ミー,ケイト」
作詞・作曲/コール・ポーター 訳詩/なかにし礼
演出/吉川 徹 振付/セルジオ・トルヒーヨ
出演 リリ/一路真輝 フレデリック/鈴木綜馬 ハウエル将軍/沢木 順
元宝塚の一路、元劇団四季の鈴木綜馬、沢木 順の
その後の成長した姿を見たいと思い観劇した。
ミュージカルで大切なのは訳詩と演出。
ところが、なかにし礼の訳詩が品がなくていけない。
「クソ暑い」を筆頭に総ての日本語が上品さを失い、不快感を与える。
言葉の中にはその表現を苦労してこそ、訳詩家の価値が出るものだ。
下品な言葉をいかに上品な言葉で表現するかが才能だろう。
演出もリリとフレデリックのめりはりの付け方が出来ていないのだ。
それで見ている観客も物語に混乱してしまう。もっと丁寧に創ってほしい。
音響もコマ劇場は音が割れる恐れがあり、高音、低音が割れてしまい、
せっかくの歌も台なし。もっと基本的なことを気にしてほしい。

一路も綜馬も真っ正直に真四角に芝居をするので、わかっているんだが、
もう少し一路はバンプに、綜馬はくずれてしてほしい。
それで芝居の面白さが出てくるのだから。
つまり二人の芝居は洋物なのに、点と点の芝居をしていて、
その間のすき間がガラガラなのだ。
そこが日本人がする洋物のちぐはぐ、外人がするのと大きく違うことになる。
日常の生活様式が違うんだからと言えばそれまでだが、それが芝居ではいるんだなあ。
一路の「男なんて大嫌い」の歌も気持ちで歌うと更にいいのでは。
綜馬の「ソウ・イン・ラブ」は彼の持ち味が最大に表現出来たところかなあ。

二人は共に似た性格(?)だけに、芝居のバランスが同じになってしまうのが残念。
二人とも四角を楕円形にしてほしい。
綜馬はかなり四季の芝居が抜けてきたが、
まだ自分一人で舞台をかっさらっていくだけの度胸がないのが残念。
浅利慶太の亡霊が周辺にいるのかも?早く忘れなさい。
役者は咀嚼力がないと、また消化力がないと駄目だ。
一路には幅の広いウーンとした一言捨て台詞が言える女優になることを期待している。
宝塚の稽古場から芝居を見ているだけに、常に成長を期待している一人。
心に潤いを持ちながら芝居をしていく気持ちを常に持ってほしいね。

沢木は舞台の最後に突然出てくる役だけに、本人もやりにくいだろうが、
どうも今回は本来の個性が出せずに空回りしているのは残念。
それと沢木自体も自分の芝居の仕方をもう一度見つめ直してチェックしてほしい。
未来を楽しみにしているのだから。
そうそう今回も舞台を見ていて感じるのは、
何で日本のミュージカルに出る人は皆、髪の毛を赤く染めるんだろう。
外国でもこんなに皆が皆、髪の毛が赤い役者はいないし、不自然だね。
髪の毛を赤くしたらミュージカル役者だと未だに思うんなら、それは大間違いだ。

  2003年8月22日 梅田コマ劇場で観劇 席1階15列19番 ちゅー太

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